私は地域包括支援センターで社会福祉士として働いていますが、ゴミ屋敷の相談は年間を通じても非常に難易度の高いケースの一つです。現場に赴くと、そこには想像を絶する光景が広がっていることがありますが、私たち職員が最も心を砕くのは、ゴミそのものではなく、そのゴミの中に座っている「人」の心です。多くの場合、ゴミ屋敷の住人は過去に大きな喪失体験をしています。配偶者の死、退職、あるいは健康の喪失。そうした深い悲しみや孤独を埋めるために、無意識のうちに物を溜め込み、自分を外界から守るための壁を作ってしまうのです。私たちに課せられた最初の任務は、その壁を無理やり壊すことではありません。まずは、その壁の内側に入らせてもらう許可を得るための対話を重ねることです。「ゴミを片付けましょう」と言えば、その瞬間に拒絶されます。ですから、私たちは「暑くないですか」「お茶を飲んでいますか」と、まずはその方の生存を確認し、大切に思っていることを伝えます。あるお宅では、玄関先で半年間話し続け、ようやく家の中に入れてもらったこともありました。ゴミ屋敷の支援は、非常に根気がいる仕事です。行政のルールや法律だけでは動かせない部分が多く、近隣住民の怒りと住人の無関心の板挟みになることもあります。それでも私たちが諦めないのは、ゴミの下に隠れてしまったその方の「本来の人生」を取り戻したいからです。清掃業者の方々と連携する際も、ただ作業をしてもらうだけでなく、本人の思い出の品を誤って捨てないよう、細心の注意を払うようお願いしています。ゴミ屋敷から抜け出した後の支援も重要です。綺麗な状態になった部屋で、一人でポツンと座っている住人の方を見ると、ここで終わらせてはいけないと強く感じます。地域のサロンに誘ったり、見守り活動を継続したりして、二度とその方がゴミの壁を作らなくて済むような環境を整えるまでが私たちの仕事です。現場は決して綺麗ではありませんし、時には厳しい言葉を投げかけられることもあります。しかし、住人の方が新しい生活に一歩踏み出し、「ありがとう、助かったよ」と言ってくださるその瞬間に、この仕事の意義を深く実感します。ゴミ屋敷問題は、地域の誰もが関わる可能性のある身近な問題です。私たち地域包括支援センターは、どんな困難な状況にあっても、最後の一人まで見捨てないという覚悟で日々の業務にあたっています。
地域包括支援センター職員が語るゴミ屋敷支援の現場