私は特殊清掃やゴミ屋敷の片付けを専門とする業者を営んでいますが、最近特に増えているのが、高級住宅街からの依頼です。依頼主は、その家に住む本人の場合もありますが、多くは疎遠になっていた親族や、死後に遺品整理を依頼された弁護士などです。豪邸の門をくぐり、玄関を開けた瞬間に広がる景色は、言葉を失うほど凄惨な場合があります。しかし、一般的なゴミ屋敷と違うのは、そのゴミの中に数百万、時には数千万円の価値がある品々が混じっていることです。例えば、高級ブランドの未着用の服が数百着、段ボールに入ったままの高級シャンパン、エルメスやヴィトンのバッグが、カビの生えた食べ残しや埃の山の中に埋もれています。私たちは、これらをゴミとして扱うのではなく、資産として一つずつ丁寧に仕分けなければなりません。富裕層のゴミ屋敷清掃で最も神経を使うのは、この仕分け作業です。一見ただの紙くずのように見える束が、実は重要な証券や現金であったり、ゴミに紛れて高価な宝石が落ちていたりすることが日常茶飯事だからです。ある現場では、ゴミの山の底から時価数百万円の高級時計がいくつも発見されました。所有者はそれらを失くしたことさえ気づかないほど、物に対する感覚が麻痺していたようです。また、こうした現場の清掃には、通常のゴミ屋敷よりも多くの時間とコストがかかります。家の規模が大きく、物の絶対量が多いだけでなく、周囲の住民に気づかれないよう隠密に作業を行う必要があるからです。防護服を着た作業員が頻繁に出入りしたり、大量のゴミ袋を運び出したりする様子は、近隣の資産家たちの不信感を買いやすく、依頼主からも「絶対にバレないようにしてほしい」と強く念を押されます。作業を終え、すべての物が運び出された後の豪邸は、本来の輝きを取り戻しますが、主を失った広大な空間には虚しさが漂います。どれほど高価な物に囲まれていても、それらを愛でる余裕も、整理する気力も失ってしまった人の心の闇は、私たち業者の手で綺麗に拭い去ることはできません。私たちはあくまで物理的な環境を整えるだけですが、その後の依頼主の人生が少しでも前向きになることを願わずにはいられません。
高価な家財が埋もれる豪邸の清掃現場から