アパートのゴミ屋敷が抱える深刻なリスク
アパートの一室がゴミ屋敷と化す。この問題は、単にその部屋の住人だけの問題では済みません。集合住宅であるアパートでは、一つの部屋の問題が、建物全体、そしてそこに住む全ての住民の安全と平穏を脅かす、極めて深刻なリスクへと直結するのです。アパートのゴミ屋敷が抱える最大のリスクは、何と言っても「火災」です。室内に山と積まれた紙類や衣類、プラスチックゴミは、非常に燃えやすい可燃物の塊です。コンセント周りのホコリが原因となるトラッキング火災や、タバコの不始末、暖房器具からの引火など、ほんの小さな火種が、瞬く間に部屋全体を火の海に変えてしまいます。木造や軽量鉄骨造の多いアパートでは、火の回りは驚くほど早く、あっという間に隣の部屋、そして建物全体へと延焼し、多くの人命を危険に晒す大惨事になりかねません。次に深刻なのが、「衛生環境の悪化」です。ゴミの腐敗による強烈な悪臭は、壁や床を伝って隣接する部屋にまで侵入し、住民の快適な生活を奪います。また、ゴミ屋敷はゴキブリやハエ、ネズミといった害虫・害獣の格好の繁殖場所となります。これらの害虫は、排水管や壁の隙間を通じて他の部屋へも移動し、建物全体に衛生被害を拡大させます。さらに、ゴミの重量による「建物の構造へのダメージ」も無視できません。天井まで積まれたゴミの重さは、時に数トンにも及びます。その重みで床が抜けたり、建物が歪んだりする危険性があり、建物の資産価値を著しく低下させるだけでなく、最悪の場合、倒壊の危険性さえもはらんでいます。アパートの一室のゴミ屋敷は、そこに住む全ての住民が共有する、静かで、しかし非常に危険な時限爆弾なのです。