呼吸器科医として数多くの症例を診てきた中で、ゴミ屋敷の住人が肺炎を機に診察室へ運ばれてくるたびに、私は深い憤りと悲しみを覚えます。彼らの肺の状態は、多くの場合、同年代の健康な人と比べて驚くほど老化しており、まるで数十年にわたる重度の喫煙習慣があったかのような損傷が見られるからです。ゴミ屋敷の中に充満する高濃度の粉塵や真菌、細菌の混ざり合った「汚染空気」を吸い続けることは、肺胞という酸素交換を行う微細な組織を少しずつ、しかし確実に破壊していきます。一度肺炎を発症し、肺の一部が線維化して硬くなってしまうと、その部分は二度と元の柔軟な組織には戻りません。つまり、ゴミ屋敷での生活によって失われた肺の機能は、多くの場合、不可逆的なダメージとなるのです。私たちは肺炎という急性期の病態を治療することはできますが、その根本的な原因である劣悪な住環境から患者を救い出さない限り、再発は時間の問題です。また、ゴミ屋敷で暮らす人々は、栄養バランスの偏りや慢性的な睡眠不足、さらには日光を浴びない生活などによって、免疫システムが著しく脆弱になっています。そのような状態で肺炎になれば、通常の治療が効きにくく、短期間で重症化し、敗血症などを合併して命を落とすリスクが飛躍的に高まります。ゴミ屋敷は、文字通り「命を削る場所」なのです。私たちは、患者に対して「薬を飲めば治る」と言うだけでなく、「今の環境に居続ければ死ぬ」という厳しい事実を伝えなければなりません。肺炎は身体からの悲鳴です。その悲鳴を無視し続けて、ゴミの山の中で静かに息を引き取る人を、私たちはこれ以上増やしてはならないのです。もし、今ゴミの山の中で息苦しさを感じている人がいるなら、どうか信じてください。部屋を片付けることは、単に場所を空けることではなく、あなたの肺に新鮮な命を吹き込むことなのです。肺炎という苦しみから解放され、何の不安もなく大きく息を吸い込める日が、必ず来ます。住環境の改善は、どんな高価な治療薬よりも効果的な「処方箋」であることを、社会全体が理解すべき時が来ています。
医師が警告するゴミ屋敷での生活が肺に与える不可逆的ダメージ