ゴミ屋敷問題の解決において、最も現実的な課題の一つが、多額に上るゴミの撤去費用です。通報によって行政が介入し、最終的にゴミの撤去に至ったとしても、その費用を誰が負担するのか、そして住人が支払えない場合はどうなるのか、という点は多くの人が抱く疑問でしょう。原則として、ゴミ屋敷のゴミの撤去費用は、その所有者である住人自身が負担することになります。自治体が行政指導を行い、住人が自ら片付けを行う場合は、住人が直接業者に依頼したり、自分で処理したりするため、費用は住人が負担します。しかし、住人が指導に応じず、自治体による行政代執行が行われた場合も、その費用は後日住人に請求されることになります。これは、「原因者負担の原則」に基づくもので、問題を引き起こした者がその解決にかかる費用を負担するという考え方です。ところが、ゴミ屋敷の住人の中には、経済的に困窮しているケースや、精神疾患などにより費用を捻出することが困難なケースも少なくありません。このような場合、自治体は費用回収が困難であることを認識しつつも、まずは請求を行います。しかし、それでも支払いが難しい場合には、自治体独自の支援制度や、社会福祉制度の活用が検討されます。例えば、生活保護受給者やそれに準ずる低所得者に対しては、生活福祉資金貸付制度などの公的な貸付制度が利用できる場合があります。また、一部の自治体では、ゴミ屋敷対策の一環として、清掃費用の一部を助成したり、無料での相談窓口を設けたりする独自の取り組みを行っているところもあります。これらの制度は、住人が経済的な理由で片付けに踏み切れない状況を打破するための重要な支援となります。さらに、住人が高齢者や障がい者で、自力での片付けが困難な場合には、介護保険サービスや障がい福祉サービスを利用して、生活援助の一環として片付けを支援することも考えられます。この場合、サービス利用料は発生しますが、全額自己負担となるゴミ処理費用に比べれば負担は軽減されます。ゴミ屋敷問題の解決は、単にゴミを撤去するだけでなく、その費用負担の問題、そして住人の生活再建までを見据えた総合的なアプローチが求められます。通報する住民は、こうした費用に関する側面も理解しておくことで、より現実的な解決策を模索する手助けとなるでしょう。